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黒い絵

熊谷守一展ですごく気になり足が止まった作品があります。
この絵の前で15分間くらい考え込んでしまいました。
その絵がこれです。

黒い絵
 【轢死】


何故この絵は真っ黒なんだろうか?

1903年、熊谷守一23歳の時に偶然通り掛った現場で目撃した若い女性の轢死体をモチーフに描かれた作品です。
女性は自殺だったようです。
現場でスケッチしたあと、その5年後の1908年に文部省美術展への出展を目指し精魂込めて油彩画で描き上げます。
ところがこの作品、文展での出展を拒否されます。
まだこの時点では絵の中にはっきりと女性の轢死体が確認出来ていました。
全体的に暗部が多過ぎてイメージが暗いと評価は芳しく無かったようです。
2年後の1910年白馬会絵画展で初めて展示されることになります。
この時点でも勿論描かれていた女性の姿は確認できました。

その後公の場に出ることはなく永い年月が過ぎます。
その後いつの間にか絵は暗色化が進み上の写真のように真っ黒くなってしまっていたのです。


では何故こんなに黒く!
1.火災などによる表面の損傷、2.煤や埃微粉の付着、3.何かしらの原因による絵具の変色、4.上から塗り潰されたなどなど、暗色化の原因は幾つか推測されます。
現在も何故ここまで暗色化が進んでしまったのか様々な角度から分析中ですが、まだ原因究明にまで至ってません。


この作品に赤外線を照射して、現在は目視出来なくなってしまった幻の絵を赤外線撮影した写真がこれです。


(サムネイル) →  黒い絵

うら若い女性の礫死体、その姿が残酷なまでに克明に描かれているのがはっきり確認出来ます。
極端なまでに簡略化された分かり易い構図で、明るい色彩の親しみを覚える晩年の作品と比べてしまいます。

まだ己が進む方向が定まっていない若き熊谷守一は、この女性の礫死体を見て何を想い、何を感じ、そして何を描き表現したかったのだろうか? 何故この絵を描き残したかったのだろうか?
観終わった後、重く複雑な思いに駆られ暫くの間次に進むことが出来ませんでした。


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黒い絵
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