ブルターニュの光と風

Sceneken

2023年08月25日 22:54


【テオドール・ギュダン作 ≪ベル・イル沿岸の暴風雨≫】


静岡市美術館での9月5日から開催の絵画展をご案内します。



フランス北西部、大西洋と英仏海峡の間にせり出すブルターニュ半島は、岩々が露出した岬やエメラルドグリーンの海、起伏に富んだ大地が作り出す壮大な自然景観を有することで知られます。中世にはこの地域一帯で一つの国がつくられ、ケルト民族に由来する独自の文化が育まれました。フランスの地域圏になってからも、その郷土色あふれる風俗や風景は保たれ、鉄道網が発達した19 世紀以降、多くの画家たちがこの地を訪れました。
本展ではフランス・カンペール美術館のコレクションを中心に、ウジェーヌ・ブーダン、ギュスターヴ・クールベ、クロード・モネ、ポール・ゴーギャン、モーリス・ドニら45 作家による約70 点の絵画作品を通して、ブルターニュという場所の魅力をひも解きつつ、この地にゆかりのある画家たちと、彼らが編み出した多様な芸術表現を紹介します。
パリとは一味ちがう、神秘と伝統の地ブルターニュへと皆様をご案内します。

西洋(フランス)絵画史の中で、19世紀後半に活動したブルターニュ地方の画家グループ“ポン・タヴァン派“は、あまり日本に紹介されていません。
印象派の技法を離れて新たな絵画様式を生み出し、それがパリの画家たちに影響を与え、その流れはやがて「ナビ派」の結成へとつながりました。

【ちょっとミニ知識】
「ナビ派」とは、19世紀末のフランスで活動した、後期印象派(ポスト印象派)の流れをくむ芸術家集団です。
1888年の夏、フランス・ブルターニュの芸術家村、ポン=タヴァンで過ごしていた若きポール・セリュジェは、後期印象派の画家 ポール・ゴーギャンに絵の指導を受けながら仲間と画家グループ“ポン・タヴァン派“を立ち上げ、やがて「ナビ派」として活動します。


●印象派・新印象派の特徴
・ジャポニズムの影響による自由由な平面構成による空間表現、浮世絵のような鮮やかな色使い
・新印象派は、印象派の光の捉え方を理論化した点描画などが台頭
主な画家:シスレー、ドガ、マネ、モネ、モリゾ、ルノワール、シニャック、スーラ、ピサロ、
●ポスト印象派・ナビ派の特徴
・絵画が自己の表現ツールとして意味を持ち始める
・理想的な色彩・形から開放されて、画家独特の解釈が始まる
主な画家:ゴッホ、ゴーギャン、ドニ、セザンヌ、ボナール、ギュダン、セリュジエ




【アルフレッド・ギユーの「コンカルノーの蟹加工場で働く娘たち」】
当絵画展のチラシにも使用されてるこの絵は、19世紀に描かれたとは思えません。
現代にも通じるほど、描かれている女性たちの表情は明るくとても豊かです。



印象派から新印象派へ、後期印象派(ポスト印象派)からポン・タヴァン派を経てナビ派へ、
フランス絵画本流の19世紀から20世紀への変遷を、当絵画展を通して感じてみましょう。



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