
カンヌ国際映画祭で「脚本賞」を受賞した、是枝監督の映画『怪物』を観てきた。
脚本を担当したのは坂元裕二さんだから坂元さんが受賞した、と言うことになる。

【脚本家 坂元祐二さん】
演技派の俳優が揃い、彼らの演技(表現)力を引き出した是枝監督の才腕も光る。
そして同じ“さかもと“の、作曲家坂本龍一の遺作となった音楽が素晴らしかった。
坂本龍一らしい要所要所で静かに流れる旋律が物語をより効果的に演出している。

【”怪物”のスタッフ勢揃い。 カンヌ国際映画祭会場にて】
物語は、主役の子供の言動を基軸に周りの子供や大人たちの揺れる気持ちが複雑に絡み合って展開する。
校長・教頭・主任・担任・母親、そして友人とその父親・・・、
それぞれが抱える悩みや心の動揺から起こす行動が互いを抑圧して追い込んでいく。
誰が正しい訳でも間違っている訳でもない。
ただ、誰もが必死になって踠(もが)き苦悩しながら生きている。

いじめ、不登校、校内暴力、DV、自閉症、、LGBTQ・・・、
複雑に絡み合った現代社会がこれらの難題を生み出し抱え込んでいる。
欺瞞、葛藤、矛盾、鬱屈、苦悩、そして閉塞感、孤立(孤独)感。
映画では、これらの難題が引き起こす問題点や課題を浮き彫りにする。
そして、映画を観る者にそれらを投げ掛けて問題提起する。
映画のタイトル『怪物』とは誰のことを指しているのだろうか?
他人に偽り、そして自分を偽る者全てが“怪物“、と言えるのかも知れない!
映画ではその解答を出していないし、何一つ問題の解決策を導いていない。
映画を観て、問題提起された私たちはどうすればいいのだろうか?
個人個人は何もすることが出来ないし、解答を出すことも出来ない。
ならば、せめて一人一人が問題意識を持ち考えるべきではないだろうか。
脚本家坂元裕二さんは映画を観る者にそれを伝えたかったのではなかろうか。
映画を観終わって、人間の生き方暮らし方を色々と考えさせられる思いであった。
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