
今朝も早くから『蝉時雨』に起こされました。暫くこの受難は続きそうです。
先日触れた蝉にまつわる興味深い話をします。
生物科学のお好きな貴方を刺激する内容だと思います。
少々長文ですが、興味ある方はお付き合いください。
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北米大陸に"周期ゼミ"と呼ばれる特殊な生態を有する蝉が居ます。
毎世代正確に17年または13年で成虫になり大量発生する蝉のことです。

その間の年にはその地方では全く発生しません(ただし、ほぼ毎年何処かでは発生しています)。
なお、17年ゼミと13年ゼミが共生する地方はありません。
周期年数が素数であることから"素数ゼミ"とも呼ばれています。
現在確認されている素数ゼミは13年ゼミが4種類、17年ゼミが3種類で全てが北米大陸でのみ生息します。

【13年ゼミ 3種類】
嘗て(数万年前)地球上には9年ゼミ、10~19年ゼミ、20年ゼミが生息していたことが化石種で確認されています。
その中から13年ゼミと17年ゼミのみが今も生息し続けているのです。
多くの種の中から何故に13年ゼミ、17年ゼミだけが生き残ったのだろうか?
気になって調べて見ました。
まだ私の頭の中では整理し切れずに悶々とした部分はありますが、何とか文書にまとめてみます。
・・・・・そこには素数年に関わる深い訳がありました。
『生態系に織り込まれた素数方程式』
周期発生の理由
数年前まで周期ゼミ発生のメカニズムは次にように考えられていた。
周期的発生および素数年発生の適応的意義を最初に指摘したのはロイドとダイバス(Lloyd and Dybas,1966,1974)である。彼らは素数年での同時発生は、捕食者が同期して発生する可能性を押さえられるためではないかと指摘した。13年と17年の最小公倍数は221年であり、同時発生は例えば4年と8年に比べて頻度が格段に小さくなる。それぞれの大量発生についてはいわゆる※希釈効果で説明できる。
※希釈効果:単独生では捕食者と出会った時に生き延びる確率が低くても、群れになれば自分が狙われる確率は減る。特に群れに子供、病気などで運動能力の劣った個体がいて、それらが捕食されれば自分は助かる確率がより増える。このように常に群れを作り自分が捕食される可能性を低くしようとすることを希釈効果という。
その後生物学者の間でこれまでに言われてきた理由としては、他の周期ゼミと羽化が重なりにくいことが挙げられてこれが主流になっていた。
「羽化が重なると交雑が発生して周期がずれ、子孫は羽化しても仲間が少ないので、繁殖や生存に不利になる。」というものだ。

検証されたのは、12年、15年周期のセミがいた場合、12年ゼミは14年ゼミと84年、15年ゼミと60年に一度重なるが、素数周期の13年ゼミは最短でも156年に一度しか重ならず交雑の可能性が低いというものだ。
この説ではクリア出来ない部分があり無理がある、と異論を唱えた静岡大学の吉村仁教授(進化生物学)らの研究チームが、2009年05月25日までにシミュレーションにより再現し解明した論文を米国科学アカデミー紀要電子版に発表した。
アリー効果で「素数ゼミ」の謎解明
吉村仁教授らの研究チームは、10年から20年までの11種類の周期ゼミが生息していると仮定し『一定の生存率や羽化率や産卵数のもとで、千年単位で個体数変化のシミュレーションを行い「仮説」の証明を試みた。
吉村教授は氷河期と成長速度を関連付けて説明した。他の周期をもつ種と交雑するとその周期が乱れるため、同じ周期を維持できなくなる。従って交雑種は大量発生年からずれて発生するようになり、希釈効果を受けられなくなるか、配偶相手を見つけにくくなる(ウォレス効果あるいは正の頻度依存選択による分断性選択)。そのため、もっとも他の周期と重なりにくい素数周期のセミが生き残った、と主張している。これは現存する17年ゼミと13年ゼミの他に化石種として12年ゼミ、14年ゼミ、15年ゼミ、16年ゼミ、18年ゼミが発見されていることが証拠だとされる。
そこで、自然界にみられる『種の個体数が一定の数を割り込むと、一気に絶滅に向かう」という「アリー効果」という法則(パラメータ)をシミュレーションに導入したところ、17年、13年、19年の順に個体数が多くなり、その他は途中で絶滅し、素数ゼミが生き残った過程の再現に成功した。
吉村仁教授によると、※「アリー効果(alle effect)」がないと、素数ゼミの優位性が出ないことが分かった。進化のメカニズムを理論的に説明できた最初の例ではないか。」と述べている。
※「アリー効果(allee effect)」:『個体数や個体密度が低いことで繁殖力や生存率が低下する現象。例えば小さい個体群では、交配可能な相手をさがすのが困難になったり、花が密生して咲かないことで花粉を運んでもらう昆虫を十分に誘引できない。』
如何でしょう不可思議な、でも見事にバランスした自然界の仕組み。
僕は、自然界の中に数式が当てはまったことに感心してしまった!!
最後までお付合い、ありがとうございました。
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